「オーバーシュート = explosive surge」和風アレンジされた英単語| 新型コロナウイルスにまつわる英単語

overshoot オーバーシュート

ここ数日、ニュースでよく耳にするカタカナ英語「オーバーシュート」。もちろん英語でも存在する単語ですが、海外のコロナウイルス関連の報道ではあまり聞かない単語です。

 

overshootと聞いて、専門家ではなく一般的な知識を持つネイティブがまずは想像するイメージは、こちら。

overshoot
画像ソース:cbc.ca

 
 

従来の使われ方

The plane overshot the runway.
飛行機は滑走路をオーバーランした。

(overshotはovershootの過去形)

 

エンジン故障により逆噴射ができず車輪ブレーキだけでは止まれなかった、急な横風で着陸地点を超えてしまった、滑走路が濡れていてハイドロプレーニング現象が起きた、パイロットの判断ミスがあった・・・理由は何であれ、滑走路内で停止できずはみ出てしまう所謂オーバーランのことを英語ではしばしばオーバーシュートと言います。(英語でもこの状況をoverrunと表現ます。)

 

あるいは、理系の人や専門的な知識を持つ人であれば、overshootと聞くと通常値を超えて突出した部分の波形をイメージするかもしれません。(下のグラフのオレンジ部分)

画像ソース:biomatrixtheory

 

いずれにしても、ここ数日、日本のメディアでよく使われている「オーバーシュート」とは若干意味にズレがあるようで違和感を覚えました。

そもそも「オーバーシュート」という単語をコロナウイルス関連の報道で聞くようになったのはいつからなのでしょうか。それは恐らく3月19日、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議が行われた際の報道からです。その会議で専門家は、「オーバーシュート」という単語を使い、それを「爆発的患者急増」と説明しています。

では、overshootの意味を確認した上で、今回のコロナウイルス感染のニュースで「オーバーシュート」という語が使われている背景を探っていきたいと思います。

 

overshoot

1.(ある地点を)通り越す・行き過ぎる・飛び越える
2.(勢いよく)あふれ出る

 

この定義からでは、「爆発的患者急増」という説明にぴったりと当てはまらないようです。2の「(勢いよく)あふれ出る」という定義には、やや合っているようですがしっくりときません。

それでは、overshootという語はどのような分野で使われるのでしょうか。ある方の情報を基に調べてみると、個体群動態論(population dynamics)や個体群生態学(population ecology)では、「人口がcarrying capacity(人口保持能力)を越える状態をovershootと言う」そうです。

 

英語のWikipediaにも、人口に関する overshootは次のように説明されています。


In population dynamics and population ecology, overshoot occurs when a population temporarily exceeds the long-term carrying capacity of its environment.

出典元:Wikipedia

個体群動態論と個体群生態学では、人口が一時的にその環境の長期人口保持能力を超えるとオーバーシュートが発生する

 

今回のCOVID-19に関して専門家が用いたovershootは、医療の対処能力を超えて感染者が急増する状態を指しているのではないでしょうか。

つまり、たとえ重症患者が出たり患者数が大規模になったりしても、適切な医療水準が維持できているうちは良いが、現在のイタリアのように医療態勢が追い付かなくなり、キャパシティーを超えてしまうとovershootとなるということです。

 

海外のコロナウイルス関連の報道ではovershootを耳にしませんが、日本の英語ニュースではどのようにovershootを表現しているか気になり調べてみると、The Japan News に次の一文が見つかりました。


The panel warned that if such regions emerged across the nation, this could lead to an explosive surge in infections called an “overshoot.”

出典元: The Japan News

専門家は、そのような地域が全国に出現すると”オーバーシュート”と呼ばれる感染の爆発的な急増に繋がる可能性があると警告しました。

 

overshootの語にわざわざ引用符が用いられていること、そして「オーバーシュート」という語の説明が加えられていることからも、元の英語とは使い方が若干異なり、「爆発的感染」や「患者の急増」を間接的に意味するものとして使われたことが伺えるのではないでしょうか。

 

では、英語圏の人にも誤解なく確実に伝わる「オーバーシュート」はどのように表現したらいいのでしょうか。

The Japan Newsでも使われていた「爆発的な=explosive」という表現で、次のようなフレーズを使うといいでしょう。

 

an explosive surge in infections
感染の爆発的な急増

an explosive increase in infections
感染症の爆発的な増加

an explosion of coronavirus cases
コロナウイルスの爆発

 

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