先日に引き続き、昨夜、東京の小池都知事は緊急記者会見を開きました。緊急というからにはついに都市封鎖をするのかと思いきや、経路不明のコロナウイルス感染者の数割が”夜の酒場”が原因のため、ナイトクラブやカラオケなどに行くことを自粛してくださいとのこと。規制するわけでもなく、やんわりとお願いする「ソフトロックダウン」。具体的な経済支援も明かされず、個人的にはなんとも肩透かしな会見となりました。
3月30日には日本医師会の常任理事が政府に緊急事態宣言を要請している上、多くの専門家も同意見のようです。そんな緊急事態、英語では state of emergency と言います。そして、緊急事態宣言を出す・発令することは、declare という単語を使います。
declare a (national) state of emergency
(国家)緊急事態宣言を出す・発令する
どのように使うか、実際のニュースを見てみましょう。
Nishimura also said Japan was not a situation now where it needed to declare a state of emergency and the government would consider if it needed to so “comprehensively”.
出典元:Reuters
また、西村氏(西村経済再生担当相)は日本は現在、緊急事態宣言する必要がある状況ではなく、政府は宣言が「総合的に」必要かどうかを検討するだろうと述べた。
Japan’s government is resisting calls to declare a national state of emergency — despite urgings from experts and a recent spike in confirmed coronavirus cases in Tokyo.
出典元:NPR
日本政府は、専門家からの要請や最近の東京都内でのコロナウイルス感染者数急増にもかかわらず、国家的な緊急事態宣言を出すことを求める声に抵抗している。
Koike said she wants Abe to use Tokyo as a reference for deciding whether to declare a state of emergency.”
出典元:NHK World-Japan
小池都知事は、安倍首相に東京(の感染状況)を参考にして緊急事態宣言を出すかどうかを決めてほしいと述べた。
“I personally feel it’s time [Japan] makes the declaration,” Satoshi Kamayachi, an executive board member of the Japan Medical Association, said at a news conference on Monday.
出典元:Kyodo News
月曜日の記者会見で日本医師会の釜萢敏常任理事は、「個人的には、そろそろ(日本が)宣言を出す時期だと感じている」と語った。
こちらの文章では、「宣言を出す」という箇所がdeclare (宣言する)という動詞ではなく、declaration(宣言)という名詞で使われています。そして、make a declarationで「宣言を出す」という意味を成しています。
また、この引用では「宣言」が何の宣言なのかは具体的に書かれていません。しかし、これを読んだ人は独立宣言などではなく、「緊急事態の宣言」ということが分かります。文脈からももちろん読み取れますが、英語で書かれている場合、冠詞でそれがはっきりとします。
この文章では、declaration に a という冠詞ではなく、the が使われています。冠詞は日本語話者には難しい概念ですが、学校で習ったように、the を使うことで「沢山ある中のどれか1つ」という意味ではなく「その」とスポットライトを当てて断定できます。
もし、ここで a declarationと書かれていると、沢山ある宣言のうちの1つの宣言ということしか分からず、読者は独立宣言なのか、世界人権宣言なのか、脱原発宣言なのか分かりません。(文脈から「緊急事態宣言」と分かりますが、英語の先生には a を theに直される間違いです。)
しかし、the declarationと書くことで読者はその前の文章からも「緊急事態宣言のことなんだ」と理解できるのです。
医療界と経済界の天秤にかけられているからなのか、日本ではなかなか出されない緊急事態宣言。しかし、このままずるずると自粛という名の「ソフトロックダウン」では補償もなく、多くの失業や廃業に繋がってしまうのではないでしょうか。やはり求められているのは補償であって、お魚券ではありませんね。